第八号 『欲望という名の電車』


山田とゐち30歳、未だ坂井真紀と酒井美紀と水野真紀と水野美紀がドレが誰だか混乱する『ミキマキパニック症候群』です。

小生、通勤に電車を利用しております。
中年男達の体から発せられるカメムシ臭に包まれ、息苦しい悪魔の箱に揺られる毎日でございます。
先日、この超過酷な通勤地獄に追い討ちをかける出来事がありました。

サラリーマン達に挟まれスクラップ寸前の小生の前に、黙々と携帯メールする男がいたんです。
男は見た目30代半ば、右手には塗装が剥げ、薄汚れた『ピーポ君by警視庁』の可愛いストラップ付きの携帯、左手は吊り革の輪をプロレスラーもビックリな『アイアンクロー風』に握る、細身で天然アフロヘアの小男でした。
アゴをしゃくらせ、目を輝かせながら打つ彼のメールのスピードは驚異的。
ファミコンの神様、高橋名人の16連射を超えるスピードです。
ピーポ君も朝から陽気に左右上下へゆ〜らゆらと楽しそう。
笑顔で華麗に舞うピーポ君に見惚れる小生の目に、彼のメールの文章が飛び込んだ。

『後15分で着くナリ (´・ω・`)待たせてゴメリンコ☆』

ゴメリンコって…

ピーポ君自首します。メールを無断で覗いた小生を逮捕して下さい。
だがその前に、この『アフロコロ助』を処刑してくれ。

殺意すら芽生え、発狂寸前の小生の表情とは逆に、メールする彼のニヤけた表情は幸せそう。
相手は新婚の妻か?いや、吊り革を持つその手には指輪がない。
それにメールの内容から今相手を待たせてるという事がわかる。

山手線御乗車お疲れ様でした、新宿ぅ〜

『ごめぇん!』

降りるや否や発した彼の言葉の矛先に目を向けると、そこには田原俊彦が金八先生で着ていた様な赤チェックのネルシャツにポケットが手垢で黄ばんだジーンズ、生え際黒くプリン状態の金髪サラサラヘアの、縦にも横にもデカいワイド横綱男でした。

『おっそいよ、もぉぅ』

って相手は男だったのかよ!
てか、お前が持つそのアニメポスターが数本突き刺さってるズタボロなソフマップの紙袋は何だ?

驚愕の事実を突きつけられ呆然と立ち尽くす小生をよそに、二人は反対ホームの総武線に乗換え千葉方面へと消えていきました。
ああ、大和魂よ何処へ行った?
そして彼等は何処へ行く?
…ああ秋葉原か、間違いない。

気付けば小生、今朝も30分の遅刻。
減給確定。



【追記】

今回は通勤電車での人間観察。
第一回目は『朝編』
朝の通勤電車は本当に静かである。
静かではあるけれど、かなり窮屈で息苦しい。
時差出勤を推進しているようだが、結局は企業が同じ時間から営業を始める為あまり緩和されていない。
お陰で、通勤時間約90分のオイラとしては、まさに勤務時間よりも体力を消耗する。
最近は漫画を読んだり、友達に携帯でメールしたりしてその時間を過ごすが、やはり人間観察マニアとしては、どうしても面白い人を見かけるとついついチェックしてしまうのである。
そうする事によって通勤時間をより快適にさせようとしているのだ。

しかしこれからいよいよ梅雨の季節、まもなく『サラリーマン殺し』の季節がやってくる。
普段の悪臭及び圧迫に加え、『湿気』『熱』という地獄が襲ってくる。
湿気と熱により、体内からは汗が滲み出て、それが湿気と熱により空気中を漂い、乗客達は灼熱悪臭地獄へご招待されるのだ・・・
スーツは朝からベットリ、埃と汗が合体し、スーツ自体が臭くなる。
そして気温が上昇すると人間は短気になる。
やはり車内暴力が起きるのもイライラしやすいこの季節である。
喧嘩が起きると電車が止まる。
灼熱悪臭地獄が延長されるという悪循環。

・・・何か良い対応策はないものだろうか。


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